狂犬病は、狂犬病ウイルスを病原体とするウイルス性の人獣共通感染症であり、人を含めたすべてのほ乳類が罹患する。
毎年世界中で約5万人の死者を出している。水などを恐れるようになる特徴的な症状があるため、恐水病(または恐水症)と呼ばれることもある(実際は水だけに限らず音や風も水と同様に感覚器に刺激を与え痙攣等を起こす)。家畜伝染病予防法に基づく家畜伝染病、感染症法に基づく四類感染症である。
名称からは「犬だけの病気」と考えられがちであるが、狂犬病ウイルスはヒトを含む総ての哺乳類に感染するので、イヌだけではなく、ネコ、アライグマ、スカンク、キツネ、コウモリ、リスなどからも感染する。一般には感染した動物の咬み傷などから唾液と共にウイルスが伝染する場合が多く、傷口や目・唇など粘膜部を舐められたりした場合にも非常に危険性が高い。コウモリが感染源の場合は、直接接触しなくても空中から撒き散らされるウイルスに人が感染したとされる例がある(ただし、この事例は因果関係がはっきりしていない。少なくとも空気感染はしないことが確認されている)。
発病後の死亡率はほぼ100%で、治療法はないため、ワクチン接種は必須である。記録に残っている生存例は僅か数例しかない(ギネスブックにも登録されている)。2004年10月、アメリカ・ウィスコンシン州において狂犬病発症後に回復した症例がある。これは、発症後に回復した6番目の症例であり、ワクチン接種をしないで発症した場合の唯一の生存例である。
日本国内では江戸時代の1732年に長崎で発生した狂犬病が全国に伝播した記録などが残されている。明治時代となってからも各地で発生が確認されており、1897年からは公式な記録が残される様になった。1923年からの3年間には全国で9,000頭以上が感染すると言う事態が発生。また、戦中の1944年には軍により国内に持ち込まれた犬が原因と見られるもの、また戦後の1948年以降には生活の改善により増えた犬が原因と見られる感染頭数の増加があった。
1950年の狂犬病予防法施行による飼い犬の登録とワクチン接種の義務化、徹底した野犬の捕獲によって1956年以来、犬、ヒト、共に狂犬病の発生はない。ただし、犬による咬傷事故が毎年6,000件程度報告される現状で、犬への狂犬病ワクチンの接種率は近年低下しており、厚生労働省の調査によれば2004年度の予防注射実施率は未登録犬も含めれば僅か39%と、流行を防ぐために必要とされるWHOガイドラインの70%を遥かに下回っている。
国内での感染が確認されなくなって以降、日本で狂犬病が発症した事例は3件で、ともに海外での感染である。一つは1970年にネパールを旅行中の日本人旅行者が現地で犬に咬まれ、帰国後に発病・死亡した事例。残り2例はいずれも2006年に京都市在住および横浜市(2年前からフィリピン滞在)の60代の男性2人がフィリピン滞在中に犬に噛まれたことが原因で狂犬病を発症し、2人とも死亡した事例。
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